風が吹いてくるのも仕方がない 

    事実は小説よ
    りも奇なり、
    という有名な
    ことわざがあ
    る。虚構がど
んなに裏をかいたとし
ても、現実は時にそれ
をやすやすと越えてい
ってしまう●ハロルド
作石の「ストッパー毒
島」を11巻まで読んだ。
1990年代後半のパ
リーグ所属選手が実名
で出てくる上、オリジ
ナルキャラクターの一
部は明らかに往年の名
選手を模していること
もあり、プロ野球好き
には夢のような作品と
なっている●当時オリ
ックスブルーウェーブ
の所属だったイチロー
は、物語中盤のキーキ
ャラクターだ。主人公
毒島大広のアホみたい
に速いストレートに興
味を持ち、対戦を熱望。
毒島はイチローを打ち
取ることで、一軍でや
っていく自信を深めて
いった●その後の展開
で毒島と濃い対決をす
る打者は、兄貴志をは
じめとするオリジナル
キャラクターに絞られ
てくる。イチローは実
名選手のラスボスだっ
た。それから13年が経
った。イチローはメジ
ャーリーグに渡り、数
々の記録を打ち立て、
記憶に残る場面を演出
してきた。それはしば
しば、フィクションを
陳腐にしてしまう力を
もっている●つい数日
前にも一つの伝説の誕
生を見せてもらった。
イチローが憧れる名選
手ケン・グリフィー・
ジュニアが引退を表明
した日の試合でサヨナ
ラヒットを放ったのだ。
打球は奇しくも、チー
ムがジュニアに敬意を
表して二塁キャンバス
付近に書いた背番号
「24」の文字付近に転
がっていた●フリーラ
イターの速水健朗はス
ポーツノンフィクショ
ンの過剰な物語化を戒
める一方、イチローに
ついて「書き手を陶酔
させる魔術を持ってい
る」と評した。件のサ
ヨナラ内野安打も、タ
イミングはアウト臭か
った。イチローはスポ
ーツライターや野球フ
ァンだけでなく、審判
も陶酔させるようだ。


 速水健朗のこの書評は名文。
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