白夜行 

 映画をPRする番組をラジオで聴いているうち、無性に読みたくなったのでした。
これまで、東野圭吾で読んだことがあるのは「名探偵の掟」「名探偵の呪縛」「黒笑小説」「毒笑小説」「探偵ガリレオ」ぐらい。
半ば意図的にメイン作品を遠ざけていたのですが、ひょんなきっかけから、現在、アホみたいに東野作品を読んでいるのです。
とりあえずネタバレ改行。























 文庫本で800ページほどありました。
「清涼院流水か!」と、ツッコミを入れてみたものの、2晩で読んでしまいました。
おかげさまで、仕事に支障が出ました。

 まずはあらすじから。

19年前(1973年)、大阪で起きた質屋殺し。何人もの容疑者が捜査線上に浮かぶが、決定的な証拠がないまま事件は迷宮入りに。被害者の息子・桐原亮司と容疑者の娘・西本雪穂は、その後別々の人生を歩んでいくかに見えた。だが、二人の周囲には不可解な凶悪犯罪が次々と起きる…。人の心を失った故の悲劇を、叙事詩的スケールで描いている。(Wikipedia


 心の闇(←便利な言葉)を抱えた少年少女2人の19年間の成長を、周囲の視点から描き出した作品。
2人の心情描写は一切ありませんが、それぞれの振る舞いを時系列順に書くことで、十分すぎるほどのキャラ立ちを果たしています。
ともに静かな狂気をはらんでいますが、そこから距離を置きたがる桐原亮司と、積極的に溶け込んでいく西本雪穂の対称ぶりが面白い。
それぞれの末路が、そのメッセージ性を強化しています。
読み物としては相当満足できるものでしたが、ベストセラーなだけに、2人の内面を描かなかったことは、「若者は何を考えているかわからない」という風潮を助長したのではと、いらぬ心配までしてしまうのでした。

 亮司と雪穂が行動を共にしている描写は、推測の場面を除き一切ありませんが、2人のつながりを表す示唆は、ところどころあります。
周辺で起こる犯罪に関与した形跡も、いっぱいあります。
しかし真相は明らかになりません。
2人は自白もしないし、真相に近づいた人は消されるか、自ら近づかないようにしているからです。
結局はすべてが推測なので、読み終わってかなり時間が経っても、「どういう真相だったのか」と気になることが何点か残ります。

 私は亮司が雪穂に射精管理をされていたと見ているのですが、同級生の園村友彦が事件に巻き込まれた証拠を隠滅するために、屍姦をしているようなのです。
それも確定ではないので何とも言えないのですが、彼はそこをどう乗り切ったのか。
場面の周辺で西口奈美江を相手に、精子が出ない絶対の自信を示している分、疑問が深まります。
熱血パワーで乗り切ったんだな、きっと。

 あとは、亮司も最後は雪穂についていけなくなったんだろうなぁ、ということです。
最終章あたりの行動は、そうとしか思えません。
「その後」が気になります。

 刑事の笹垣が亮司をはじめて見た時、暗い目をした少年だと感じたのに引っ張られがちですが、最終的にそうなったのは、彼が雪穂に教唆?されて父親殺しにかかわった時だと思うのです。
それまでは、劣悪な家庭環境ながら、向学心があり、優しい心も持った少年だったはず…

 そう思えば思うほど、毒婦・雪穂の完成度の高さを感じずにはいられません。
男性が描く、異性としての女性のワケのわからなさを突き詰めていくと、こんな感じになるのかな、と。
彼女の方が亮司より日の当たる道を歩いている分、男の読者として、言いようのない理不尽さに駆られます。
雪穂がそうなったのが、桐原父のせいなのか、あるいはもっと前からなのかは、議論の余地があるように思う。

 そんな感想を抱いて、黒笑小説に載ってた「シンデレラ白夜行」を読み返すと、ああ白夜行は雪穂の物語なんだということに気付き、あれこれ頑張った亮司のことが、なおさら可哀相になってくるのでした。

 この感想、「幻夜」に引きずられています。
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