やまとの羽根 

 「やまとの羽根」を絶版マンガ図書館で読みました。
咲香里のバドミントン漫画で、全4巻。
ヤングマガジンアッパーズで2003~04年にかけて連載されたものでした。
http://www.zeppan.com/book/detail/42414








 バドミントンの技術教本か、というくらい丁寧に、上達のプロセスを描いてます。
青年誌なのにエロ要素も皆無、すごい!
jコミの中の人は、

これはマトモに面白い作品で、まさに少年漫画の基本というか、新人漫画家の教科書にしても良いほどの本格スポーツ漫画です。(http://d.hatena.ne.jp/KenAkamatsu/20120422/p1

と言っており、つまり、漫画好きにもバドミントン好きにも読むのに適した漫画だということです。

 運動神経に優れた中学1年の鳥羽大和は、双子の妹・撫子のシャトル打ちに付き合わされている時に偶然、同世代の全国王者・沢本翔の卓越した技術に触れ、バドミントンに魅せられた。
撫子が入部した女子だけのバドミントン部に初心者の大和も入部、旺盛な好奇心を糧にみるみる成長していく。
周囲の実力者たちも大和のバドミントンへの真摯な姿勢に感化され、己の壁と向き合いながら協力を惜しまない。
2学期には元インドネシア強化選手の同級生・上野ハルも入部し、バドミントンにさらにのめり込んでいくのだった。

 そんなあらすじ。
あらすじにオチがないのは、掲載誌が休刊する、というオチがついたから。
もし休刊が無かったら、テニス漫画の「ベイビーステップ」みたいになってたと思うのだけれど。
とても勿体無いです。

 翔が高々と打ったサーブが、羽根を収納するケースにスッポリと入るのを見て、大和はバドミントンに恋してしまうのですね。
そして、簡単そうに見えた技術習得が上手くいかないことに燃えて、なおさらのめり込んでいく。
男子不在のバドミントン部に入って、大和のことが気になる女子も割といて、恋愛要素には事欠かないけど、大和は女の子に目もくれない。
バドに恋しちゃってるので。

 大和だけじゃなくて、作中の実力者たち全員、対人の恋愛要素無いです。
それもまた、大和と同じ理由なのでしょう。
色恋に現を抜かすのは、弱小の女子バド部の平部員ばかり、という。
それぐらいストイックにならないと上手くはなれないんだ、というメッセージを明確に打ち出しているのも、実に教本らしい。

 私は早坂先輩が好きです。
競技環境に恵まれず実力が頭打ちになっていることにプライドが高いゆえに悩みながら、大和の存在に刺激を受けて辛うじて競技への情熱をつないでいくメンタルの弱さが愛おしい。
お蝶夫人に通じる美学があるというか。
彼女の苦しみを描くことで、大和が将来ぶつかるであろう壁の存在も示唆されることになるわけです。

 大和の「バドミントンバカ」を最初はみんな笑うけど、次第に熱意に絆されて教える側も本気になる。
本気の教えを受けた大和は一度体で覚えた技術をすぐに習得するから、教える側もどんどん楽しくなってくる。
大和にとっては幸せな好循環が、作品を支配しています。
これからぶつかるはずだった壁にぶつかる前に作品が終わってしまうのは、大和にとってはある意味で不幸だったのかもしれません。

 しっかりと布石を打ってきただけに、初めての練習試合に勝ったところで連載が終わったのが勿体無い。
翔は1話以来顔見せが無かったし、大和も(あの変な天井で死ぬほどシャトルが打ちにくそうな)代々木第二体育館のセンターコートに立つことはなかった。
作者にとっても痛恨の出来事だったことが、最終巻のあとがきを見ればわかる。
そこで生まれたのが、週刊少年マガジンで長期連載された「スマッシュ!」だったわけだ。

 スマッシュ!はマガジンでリアルタイムで追ってました。
中盤から、高校生になった「やまとの羽根」の登場人物がライバルとして出てくる。
スマッシュ!は、バドミントン強豪校が舞台で、割と競技そっちのけで恋愛してた印象があるので、やまとの羽根のストイックさに面食らった、というのはあります。
スマッシュ!読み直したくなってきたな。
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