ゴールデンスランバー 

 伊坂幸太郎の2007年の小説。
手近にあったので、600ページほどありましたが、ついつい一気読みしてしまいました。
以下ネタバレです。
だいぶ前の小説で、映画化もされているようなので、ネタバレも何もないですが……。











 大きな力が働いて首相暗殺の濡れ衣を着せられた青柳雅春は、友人の助言を受け、逃げることを選択する。
仙台中に張り巡らされた監視システムやマスコミの印象操作によって、みるみる追い込まれる青柳だが、元宅配ドライバーの経験や、青柳を信用した協力者を頼りに、辛くも追跡をかいくぐる。
やがて、青柳自身がテレビを使って自らの潔白を訴えようと、反転攻勢に出る。
何気なかった青春時代の思い出や、人間関係を総動員した一世一代の賭けの結果は――。


 以上あらすじ。
陰謀論と膨大な伏線とその回収、そして劇場型の大掛かりな逃走劇。
ギチギチに詰め込んだエンターテインメントです。
600ページくらいあるけど、無駄がないってすごい。

 それぞれ好みはあるとは思いますが、作品としての完成度は非常に高い。
総合力が高い。
今のところ、著者の代表作とされているようです。
これ以上に広範な読者を楽しませる作品を書くのは、相当骨が折れるのではないかなと思います。

 個人的には、20年後の視点で書かれた事件の概要が一番好きで、全体の約3分の2を占める逃走パートは「映像向きだなぁ」と思いながら読んでました。
作品が発表された時期は、テレビ離れ世代が台頭してきていて、大多数がマスメディアを利用した印象操作に流される一方で、嘘臭さをかぎ付けたり、全く縛られていなかったりする世代の感覚が敏感に取り入れられています。
アクションシーンが妙に日本離れしているのは、読者にとっての日本とは違う日本で展開されている話だということをアピールしているからなのかなと感じました。

 逃走パートを、ご都合主義と切り捨ててはいけないと思うのです。
突飛な展開に必然性を持たせるために、著者は相当神経を使って伏線を張っています。
くどいくらいに説明しているからこそ、ちょっと現実離れした社会に、リアリティを感じてしまう。
こんな冗談みたいな社会に、現実が近付き、追い付き、追い越しつつあるんだという警鐘は、しっかりとかみしめないといけません。

 今さらですが、モチーフはケネディ暗殺。
下手人として逮捕直後に殺されたオズワルドが、青柳。
青柳に罪をかぶせるべく、影武者まで作って首相暗殺を企てた何者かの周到ぶりが恐ろしい。
何が恐ろしいって、暗殺方法はともかく、罪をかぶせることは現実でも実現可能なのが恐ろしい。

 自分は大学時代、読書サークルに所属していたのですが、伊坂幸太郎、流行ってました。
「春が二階から落ちてきた」で始まる『重力ピエロ』とか薦められて読んだのですが、今でも書き出し覚えてるくらいにインパクトがあるのに、作風自体は地味な印象があったんですよね。
だから、ゴールデンスランバーが堅実ながら派手派手で驚きました。
ずっと東北にこだわって書いてきている印象があるので、震災後、どんな執筆活動をしているのかが気になるところです。(←調べてない)

 映画……半沢直樹ですね。
このキャストなら外れはなさそうなので、ちょっと見てみたい。
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